【0005】THE BOOM“FACELESS MAN”
今までみたなかで最高のライブのひとつに、THE BOOMの武道館での解散ライブがあげられる。圧巻で、演者も、客も、もう二度と戻ってこないその瞬間を、味わいつくそうと瞬きすら惜しむような、そんな濃密で幸福でだからこそさみしくてたまらない時間を得ることができた。
駆け回り、踊りまわり、叫び、笑い、高らかにうたう宮沢さんは、学生時代に繰り返して見たビデオの中とまるで一緒か、それ以上のパフォーマンスだった。
【0004】サニーデイ・サービス“MUGEN”
音楽に刺激されて、他の欲求が生まれることが多々ある。
その中でも「コーヒーが飲みたくなる」欲求がうまれるのが、サニーデイ・サービス。
部屋で落ち着きながら。
すこし寒い公園でベンチに座りながら。
夜の海をただ眺めながら。
その音楽を聴きながら、ホットコーヒーを啜りたくなる欲求が、何故か生まれてくる。
コーヒーの良い香りに包まれながら、やわらかな音楽につつまれる幸せ。
幸せはきっといたるところに転がっていて、その幸せに気がつけるのは自分次第。
小さな幸せを見逃さず集めれば、それもいつか日常の喜びに変わるんじゃないのかな。
【0002】Polaris“Polaris”
夜の散歩はいいものだ。
夜の散歩には重すぎず、軽すぎず、どこまでも歩いていけるような
浮遊感のある柔らかい音楽がよく似合うと、ずっと思っている。
初夏の散歩はとくにいい。
ベンチに座って夜の空気を吸い込んだり、橋の上から川の流れを眺めたり。
ほんの少しお酒を飲みながら、夜空をただ見上げるのも楽しいものだ。
散歩のお伴があると、散歩はぐんと楽しくなる。
ポケットにいれて、一緒に夜を過ごしたい、ふわふわと柔らかな夜のかけらたち。
【0001】PIZZICATO FIVE“OVERDOSE”
普段テレビを見ない生活を送っているが、人の勧めがあれば別だ。
夜中に仲間のLINEから、Eテレを見るよう勧めがあった。
サブカル史の渋谷系特集。懐かしさがこみあげてくる。
過疎化の進んだ海と山だけが自慢ともいえる田舎町で18歳まで過ごした。
長時間のバスに揺られながら、ほんの少しの現金と母が手作りしたおにぎりをもって
札幌に買い物に行くのが田舎ではステータスだった。
札幌ですらあこがれの塊だったが、修学旅行で東京に行けるとなった時には
舞い上がって仕方がなかった。
OliveやCUTIEなど、雑誌に出てくる世界。
PIZZICATO FIVEをウォークマンで繰り返し聴きながら、古びたホテルから
東京の夜空を眺めた。“OVERDOSE”は修学旅行のテーマソングだった。
音楽はもちろん大好きだったが、野宮さんの独特のファッションに自由を感じていた。
着たい服をしたい髪型とメイクでめかしこんで、いいんじゃない?
田舎で雑誌越しにしか世界を知ることのできなかった頃の自分には
女神のように神々しかったのを今でも覚えている。
「いいんじゃない?」その歌声は自由を教えてくれたんだったな。